· 

高低差4,000 m水循環像~亜寒帯から亜熱帯を網羅する地球環境の縮図~


富山が面する日本三大深海湾の一つである富山湾は水深1,000 mを超え、背後の陸域には標高3千メートル級の北アルプス立山連峰が聳えている。僅か数十kmの水平距離で4,000 m以上の高低差をもつ富山は、世界的にも非常にユニークな地形をしている。一般的に中緯度では山の高さが100 m高くなると、北側に緯度1度増した気候とほぼ同じになるといわれている。おおよそ北緯37度にある富山県では、3,000 m級の立山山頂あたりは北緯67度、つまり北極圏(北緯66度33分)と同程度の気候といえる。北アルプスの高山地が北極圏周辺や寒帯とほとんど同じ気候・植生になっている一方で、富山湾の表層水には熱帯由来の対馬暖流水が滑り込んでおり、南方の魚介類も運んでくる。日本最南端の沖ノ鳥島(北緯20度25分)から最北端の択捉島(北緯45度33分)までの日本列島を立てたとすると、富山の高低差4,000 mと似たような環境になる。富山は、海洋・沿岸・都市・里山・森林・高山等をコンパクトに有し、気候等の環境変化と人間社会との関わりの有り様がリアルに映し出されている。つまり、富山は北半球を網羅する地球環境の縮図モデルとして捉えることが可能なのである(図1)。