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海の3D 診断:全ての海を1 枚の写真に


ガガーリン “地球が青かった”

の一声で有名な地球全体を写した1 枚の写真を、今は誰でも“目にする”ことができる。

一方、海洋の“懐”の流れを目で見えるように把握することは依然として難しい。海洋や気候のバランスが崩れ始めている今、海洋の実態の把握は一刻も争う緊急事態である。

 

GEOTRACES計画
 化学元素をインクのように駆使して海洋循環を捉えたGEOSECS 計画から30 年が経ち、GEOSECSの第2 フェーズとして、GEOTRACES(微量元素・同位体 による海洋生物地球化学研究)計画が考案されはじめたのは2000 年代の初頭であった。この間の観測・分析・データ解析・シミュレーション技術の進展は著しく、周期律表をまるごと使い、複数の化学元素やその同位体を“指紋”として海水の“出身と履歴”を追えるようになっていた。2004 年にGEOTRACES のサイエンスプランを策定し、翌2005 年に承認され、全球レベルでの観測・分析方法の校正を経て、ようやく2010 年より真の“化学海洋学大航海時代”の幕開けとなった。現在は 40 カ国以上が参画して、“全ての海を1 枚の写真に!”を目標として、精力的に「海の3D 診断」を行っている。

 

 既に、6 大陸17 カ国により40 以上の断面観測を完遂し、太平洋・大西洋・インド洋・極域を網羅する、海水・粒状物質・堆積物・生物・エアロゾル・雨などのデータを公表している。その象徴的な微量元素・汚染物質・放射性核種・安定同位体など、500 以上のパラメータと用途を下記に挙げる。

 - Hydrography データ

 - 生物地球化学データ:

 - 栄養塩と水の同位体

 - その他、GEOTRACES プログラムの象徴的な微量元素、汚染物質、放射性核種、

   安定同位体等パラメータ等

         ・ 海洋の生産性と生態系を制御する微量栄養塩

         ・ 海洋のプロセスをトレース

         ・ 海洋における汚染物質

         ・ 古海洋・古気候復元のプロキシ

 

日本学術会議中部地区会議ニュース(№147 2019.10)より抜粋