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日本一おいしい水―“水のソムリエ”と“利き水”―


グローバルな挑戦者 利き水

環境省が選んだ日本名水百選のうち、昭和版と平成版と合わせて富山県では8つも入っており、熊本県と並んで全国トップである。水の化学成分からの美味しい指数に加えて、脳卒中を引き起こすリスクを考慮した“健康指数”から、富山の地下水は美味しくて健康的な水であると“太鼓判を押した”。これをネタに、オープンキャンパスや体験入学では、研究室のOBやOGに大都会の水道水を送ってもらって比較して、おいしい水の科学鑑定の裏技としての“利き酒”ならぬ“利き水”を実験する“水のソムリエ養成講座”を開いている。富山県の要請を受けて第68回全国植樹祭とやま2017に設けたブースには数百名の来訪者が、また富山で開催されたSCOR(海洋研究科学委員会)2019年会では世界27か国の委員たちが“利き水”に挑戦し、大いに盛り上がった。

 

富山の水のおいしいさの源

この美味しい水の源は富山の豊富な地下水であり、それがもたらされる理由は降水量にある。年間平均降水量(2,250 mm)は緯度的にほぼ同じの東京(1,530 mm)に比べて1.5倍になり、特に県東部の山間部では4,000 mmと、3倍近くにも上る。この差が付いたのは冬である。冬季、シベリアから飛来する乾燥した寒気団が、対馬暖流が北上している日本海を通過すると激しい蒸発を引き起こす。形成された雪雲は3千メートル級の立山連峰を越えることができず、日本海側でほとんどが降ってしまう。これが雪国富山の豪雪のメカニズムであり、豊富な地下水の源でもある。しかしながら、古くから豊富な地下水の恩恵を受けつつ豊かな暮らしがもたらされた北陸地域も、近年の温暖化の影響で日々の暮らしに変化が見え始めた。